主系と待機系の2系統で構成し、主系故障時に待機系へ切り替える方式。
デュプレックスシステムとは、主系(メインで処理する系統)と待機系(予備の系統)の2つを用意し、普段は主系だけで処理を行い、主系が故障したら待機系に切り替える方式のことです。デュプレックス(duplex)は「二重の」という意味です。
2系統を持つ点はデュアルシステムと同じですが、使い方が異なります。
・主系:通常時に処理を担当する、現役の系統
・待機系:普段は処理せず、万一に備えて待っている予備の系統
身近な例で考えると、車のスペアタイヤに似ています。普段は4本のタイヤ(主系)だけで走り、トランクのスペアタイヤ(待機系)は出番がありません。パンクしたとき(故障時)に初めてスペアに付け替えて、走行を続けます。
主系と待機系は、それぞれ次のような役割を持ちます。
・主系(現用系):通常時に本番の処理をすべて担当する。システムの「本来の働き手」
・待機系:普段は処理をせず待機し、主系の故障時に処理を引き継ぐ
待機系がどれだけ「すぐ動ける状態」で待っているかによって、次の3種類に分かれます。
・ホットスタンバイ:待機系も電源を入れて準備済み。故障時にすぐ切り替わる
・ウォームスタンバイ:待機系を一部だけ起動。切替に少し時間がかかる
・コールドスタンバイ:待機系の電源は切ったまま。故障時に起動するので切替が最も遅い
ホットになるほど切り替えは速くなりますが、待機系も動かしておくぶん費用がかかります。コールドはその逆で、安く済む代わりに復旧までの時間が長くなります。求める復旧の速さと予算のバランスで選びます。
デュプレックスとデュアルはどちらも2系統を持ちますが、2系統の使い方が根本的に違います。混同しやすいので、表で整理します。
| 観点 | デュアルシステム | デュプレックスシステム |
|---|---|---|
| 通常時 | 両系統が同時に稼働 | 主系のみ稼働、待機系は待機 |
| 結果の扱い | 両系の結果を照合 | 主系の結果をそのまま使う |
| 故障時 | 正常な系統で継続 | 待機系へ切り替えて継続 |
| 稼働コスト | 高い(常に2系統) | 比較的低い(普段は1系統) |
ひとことでまとめると、デュアルは「2系統が常に同時に動いて答え合わせをする」、デュプレックスは「普段は1系統だけ動き、壊れたら予備に交代する」方式です。デュアルは誤りまで検出できるぶん高コスト、デュプレックスは普段1系統ぶんで済むぶん経済的、という関係になります。
結論:待機系がなければ、主系が壊れた瞬間にサービスが完全停止する。それを避けるために予備の系統を用意しておくのです。
どんなコンピュータも、いつかは故障します。ハードウェアの劣化、ソフトウェアの不具合、停電など、原因はさまざまです。待機系がない場合の流れは次のとおりです。
・主系が故障する
・サービスが完全に止まる
・原因を調査・修理するまで(数分〜数時間)止まり続ける
待機系があれば、この「止まり続ける時間」を大幅に短縮できます。
・主系が故障する
・待機系が自動で処理を引き継ぐ(数秒〜数十秒)
・サービスの中断を最小限に抑えられる
身近な例で考えると、発電機を持つ病院のようなイメージです。停電(主系の故障)が起きても、すぐに非常用発電機(待機系)が動き出し、手術中の機器を止めない。「万一のための予備」を常に持っておくことが、止められないシステムの基本です。
デュプレックスシステムでは、待機系が「どれだけすぐ動ける状態で待つか」によって3種類に分かれます。この違いは切替の速さとコストのトレードオフ(=一方を良くすると他方が悪くなる関係)です。
ホットスタンバイ:待機系も電源を入れて、主系と同じ状態でずっと動かしておく方式です。故障が起きたらほぼ瞬時に切り替えられます。常に2台動かす電力・費用がかかります。
→ 銀行や決済など「数秒も止められない」システム向け
ウォームスタンバイ:待機系を一部だけ起動した中間の状態で待ちます。切替には数分かかりますが、コールドより速く、ホットより安く済みます。
→ 多少の中断は許容できるが長時間は困るシステム向け
コールドスタンバイ:待機系の電源は切ったまま保管しておく方式です。故障時に電源を入れて起動するため、切替に数十分かかることもあります。その分、待機中のコストはほぼゼロです。
→ 復旧に時間がかかっても許されるコスト優先のシステム向け