目標値とのずれ(偏差)に比例した制御量を出す制御方式
P制御(比例制御)とは、目標値と現在の出力との偏差(=ずれ)に比例した制御量を出す、最もシンプルな制御方式です。「P」は比例を意味する Proportional の頭文字。式は u = Kp × 偏差 だけで表せます。
身近な例で言うと、満タンに近づくほど蛇口を絞るのと同じ感覚です。バケツが空のうち(ずれが大きい)は勢いよく水を出し、満タンに近づく(ずれが小さくなる)につれて自然と水量を絞っていく。ずれの大きさに応じて出力を加減するのがP制御です。
上のツールで Kp のスライダーを動かすと、出力(赤い曲線)が目標値(点線)にどう近づくかが変わります。Kpを大きくすると速く目標値に近づきますが、わずかなずれ(定常偏差)が必ず残ることに注目してください。
「偏差に比例」とは、ずれが2倍になれば制御量も2倍、半分になれば半分になるという意味です。比例定数が Kp(比例ゲイン)で、これが大きいほど同じ偏差に対してより強い制御量を出します。
計算例(Kp=3 のとき):
・偏差 = 1.0 → u = 3 × 1.0 = 3.0
・偏差 = 0.5 → u = 3 × 0.5 = 1.5
・偏差 = 0.1 → u = 3 × 0.1 = 0.3
ここで重要なのは、偏差がゼロになると制御量もゼロになる点です。つまり目標値ぴったりに到達すると「何もしない」状態になります。これがP制御の弱点である定常偏差につながります。Kpを大きくすると応答は速く・偏差も小さくなりますが、大きすぎると行き過ぎて振動(オーバーシュート)してしまうので、上のツールでKpを最大まで上げて確かめてみてください。
定常偏差とは、時間が十分たって落ち着いた後も消えずに残るずれのことです(オフセットとも呼びます)。P制御では原理的にこれがゼロになりません。
理由はシンプルです。制御対象を目標値に保つには、たいていある程度の制御量を出し続ける必要があります(例:坂道で車を止めるにはアクセルかブレーキを踏み続ける)。ところがP制御は u = Kp × 偏差 なので、制御量を出し続けるには偏差が残っていなければならないのです。偏差がゼロになると制御量もゼロになり、対象が目標値から離れてしまう。そのため、必要な制御量を生む分だけのずれが残る点で釣り合います。
Kpを大きくすると、同じ制御量を出すのに必要な偏差が小さくて済むので定常偏差は減ります。しかし完全にゼロにはできず、上げすぎると振動して不安定になります。「P制御だけでは定常偏差が残る → これを消すには I(積分)制御を加える」のが基本的な流れです。実際、PI制御やPID制御にすることで定常偏差をゼロにできます。