一部の情報を捨てて高い圧縮率を得る、復元しても完全には戻らない圧縮方式
非可逆圧縮(ロッシー圧縮)とは、データの一部の情報を思い切って捨てることで、可逆圧縮よりはるかに小さく圧縮する方式のことです。「非可逆」とは「元の状態には戻せない」という意味で、伸張しても完全には元データに戻りません。
身近な例で言うと、料理を冷凍保存するイメージに近いです。長期間コンパクトに保存できますが、解凍したときの食感は作りたてと完全には同じになりません。「だいたい同じだが、細部は失われている」という状態です。
ではなぜ情報を捨てても問題ないのでしょうか。それは人間の目や耳が気づきにくい情報を優先して捨てるからです。写真の微妙な色の差や、人間にほぼ聞こえない高音などを削っても、見た目・聞こえ方はほとんど変わりません。だから大きく圧縮できるのです。
非可逆圧縮では、「どれだけ情報を捨てるか」を調整できるのが大きな特徴です。捨てる量を増やすほどファイルは小さくなりますが、その分だけ画質・音質は落ちていきます。この「あちらを立てればこちらが立たず」の関係をトレードオフと呼びます。
| 設定 | ファイルサイズ | 品質 |
|---|---|---|
| 低圧縮(高画質) | 大きい | 高い(劣化が目立たない) |
| 中圧縮 | 中くらい | 実用上は十分 |
| 高圧縮(低画質) | 小さい | 低い(ブロックノイズ等) |
上の図解の曲線は、横軸が圧縮率、縦軸が品質を表しています。圧縮率を上げる(右に進む)ほど品質が下がっていくのが分かります。実際のJPEG保存などでは「品質80%」のように数値で調整でき、用途に応じて落としどころを選びます。
注意したいのは、一度捨てた情報は二度と戻らない点と、圧縮と保存を繰り返すたびに少しずつ劣化が蓄積する(世代劣化)点です。JPEGを編集して何度も上書き保存すると、画質がだんだん悪くなるのはこのためです。重要な原本は非圧縮や可逆形式で残しておくのが安全です。
代表的な非可逆圧縮の形式には次のものがあります。
・JPEG:写真向けの画像形式。色や明るさの細かい変化を間引いて圧縮する
・MP3 / AAC:音声・音楽形式。人間に聞こえにくい音をカットして圧縮する
・MPEG / H.264:動画形式。フレーム間の差分だけを記録して大幅に圧縮する
使い分けの考え方: 写真・音楽・動画のように多少の劣化が問題にならず、サイズを小さくしたいデータには非可逆圧縮が向きます。逆に、文書・プログラム・図面など1ビットも失えないデータには可逆圧縮(ZIP・PNGなど)を使います。
ポイントの整理:
・非可逆= JPEG・MP3・MPEG(写真・音・動画)
・可逆= ZIP・PNG・GIF・FLAC(ファイル・劣化させたくない画像/音声)
・非可逆は高圧縮だが元に戻らない、可逆は完全復元できるが圧縮率は低め、という違いがある