偏差の累積(積分)に応じて制御量を出し、定常偏差を消す制御方式
I制御(積分制御)とは、これまでの偏差を時間で足し合わせた累積(積分)に比例した制御量を出す方式です。「I」は積分を意味する Integral の頭文字。式は u = Ki × ∫偏差 dt です。記号 ∫(インテグラル)は「足し合わせる」という意味だと考えてください。
身近な例で言うと、たまった不満を少しずつ態度に出すのに似ています。一回一回のずれは小さくても、それが何度も続けば「もういい加減にしてくれ」と反応が強くなる。小さなずれでも放置せず、長く続けば必ず手を打つ。これがI制御の働きです。
上のツールで Ki のスライダーを動かすと、偏差の累積(緑の点線)が増えるほど出力(赤い曲線)が目標値に近づきます。P制御と違って最終的にぴったり目標値に到達する(定常偏差ゼロ)のがI制御の大きな特長です。
積分とは、難しく考えず「毎回の偏差を足し算でためていく」ことだと捉えてください。離散時間(一定間隔でサンプリングする実機)では、サンプリングごとに偏差を加算するだけです。
計算例(毎回の偏差を足していく、間隔 Δt=1 とする):
・1回目 偏差0.5 → 累積 = 0.5
・2回目 偏差0.3 → 累積 = 0.5 + 0.3 = 0.8
・3回目 偏差0.1 → 累積 = 0.8 + 0.1 = 0.9
制御量は u = Ki × 累積 なので、累積が増えるほど制御量も増えていきます。
ここがP制御との決定的な違いです。P制御は「今の偏差」だけを見るので、偏差が小さくなると制御量も弱まります。一方I制御は過去のずれをすべて覚えているので、偏差が小さくても累積が大きければ強い制御量を出し続けられます。Ki(積分ゲイン)はこの累積をどれだけ強く効かせるかの重みで、大きいほど速くずれを詰めますが、ためすぎて行き過ぎやすくなります。
I制御の最大の効果は定常偏差をゼロにできることです。P制御は偏差がゼロになると制御量もゼロになるため目標値の手前で止まりますが、I制御は偏差がわずかでも残っている限り累積が増え続け、制御量を出し続けるので、ずれが完全に消えるまで追い込めます。
なぜ偏差がゼロになっても制御量を保てるのか。偏差がゼロになった瞬間、累積はそれ以上増えませんが過去にためた累積はそのまま残るので、その分の制御量を出し続けられます。これがP制御にはできない芸当で、目標値ぴったりの位置を維持できる理由です。
ただしI制御には弱点もあります。
・応答が遅い:累積がたまるまで時間がかかるので、目標値に届くのに時間を要する
・オーバーシュートしやすい:目標値に到達した時点で累積が貯まりすぎていると行き過ぎ、揺り戻して振動する
このため実際にはI単独ではなく、応答を速くするPと組み合わせたPI制御として使うのが基本です。ポイントは「定常偏差を消すのはI制御の働き」という点です。上のツールでKiを大きくすると、ずれは速く消えるが揺れて遅くなる様子が確認できます。