結果から原因の確率を逆算する公式(事前確率 → 事後確率の更新)。
P(A|B) = P(B|A) × P(A) / P(B)
ベイズの定理は、「結果(B)が観測されたとき、原因(A)が本当に起こっていた確率」を逆算する公式です。1763 年にトーマス・ベイズによって示され、現代では機械学習・医療診断・スパムフィルタ・統計推論など幅広い分野で使われています。
直感的に言うと、「あらかじめ持っていた予想(事前確率)を、新しい証拠(観測結果)に応じて更新する」のがベイズの定理の本質です。たとえば「この街の犯罪率は 1%」と思っていたところに、「現場から犯人と特徴が一致する人が見つかった」という証拠が加わると、その人が犯人である確率は更新されます。
公式の各要素は次のように呼ばれます。
・P(A):事前確率(証拠を見る前の予想)
・P(B|A):尤度(原因 A のもとで結果 B が起こる確率)
・P(A|B):事後確率(結果 B を見たあとに更新された A の確率)
・P(B):周辺確率(証拠 B 自体の起こりやすさ、正規化定数)
ベイズの定理の使いどころは、「事前確率を事後確率に更新する」という考え方です。新しい情報(観測・証拠)が得られたら、それを取り込んで確率を見直す。これがベイズ的思考の核心です。
事前確率 P(A) → 事後確率 P(A|B) への更新の流れ:
・(1) 事前確率を設定する(過去の統計や常識から)
・(2) 観測を行う(検査結果、新しいデータなど)
・(3) ベイズの定理で確率を更新する
・(4) 更新された確率(事後確率)が、次の判断の新しい事前確率になる
具体例: スパムメール判定
過去の統計から「メール全体の 30% がスパム」(事前確率 30%) と知っているとします。新たに届いたメールに「無料」という単語が含まれていた場合、スパムの 80% にこの単語が含まれ、通常メールの 5% にも含まれるとすると、ベイズの定理で計算すると 事後確率は約 87%。最初は 30% だった見込みが、たった 1 つの単語で 87% まで上がるのです。
上のシミュレータで 「事前確率(有病率)」のスライダーを動かしてみてください。同じ精度の検査でも、有病率が変わると事後確率が劇的に変わるのがわかります。これがベイズ的判断の重要なポイントです。
医療検査やセキュリティ警報などで、「精度 99%」と聞くと、つい「ほぼ確実」と思いがちですが、ベイズの定理を使うと意外な結果が見えてきます。
有名な落とし穴: 「有病率 1%、感度 99%、特異度 99%」の検査で陽性が出たら?
100 人いれば、病気 1 人(陽性 0.99 人)、健康 99 人(偽陽性 0.99 人)。陽性者の半分は実際には健康なのです! 上のシミュレータの「まれな病気」プリセットを試してみてください。
感度と特異度の意味:
・感度 = P(陽性|病気):病気の人を「陽性」と判定する確率(見落とさない力)
・特異度 = P(陰性|健康):健康な人を「陰性」と判定する確率(誤検知しない力)
・偽陽性率 = 1 − 特異度:健康なのに陽性と出る誤りの率
事後確率が高くなる条件:
・事前確率(有病率)が高い → 陽性が出ても本当に病気である可能性が高い
・特異度が高い(偽陽性が少ない)→ ノイズが減る
・感度が高い(病気を見逃さない)→ 真陽性が多くなる
「精密検査」「二段階検査」のように検査を 2 回行う場合もあります。1 回目の事後確率を 2 回目の事前確率として再度ベイズの定理を適用すると、確率がさらに更新されます。これがベイズ的更新の連鎖です。