作業を階層的に分解して管理しやすくした構造。
WBS(作業分解構造)とは、Work Breakdown Structure の略で、プロジェクト全体の作業を、上から下へ階層的に分解して構造化したものです。木が幹から枝、枝から葉へと分かれていくように、大きな目標を小さな作業へと細かくしていきます。
身近な例で考えると、大掃除の段取りに似ています。「家全体を掃除」だけでは漠然としていますが、「リビング・台所・風呂」に分け、さらに「床拭き・窓拭き・ゴミ捨て」まで分けると、誰が何をやればよいか一目で分かります。これがWBSの考え方です。
上のツールで▶ボタンを押すと、1つのプロジェクト全体が大分類・中分類・ワークパッケージへと段階的に分解されていく様子を確認できます。
WBSは、いきなり細かい作業を並べるのではなく、大きいまとまりから少しずつ細かく分解していきます。手順は次のとおりです。
・① 全体を置く:プロジェクトのゴールを最上位の箱として置く
・② 大分類へ分ける:設計・開発・テストなど大きなまとまり(フェーズ)に分ける
・③ 中分類へ分ける:各まとまりをもう一段細かい作業へ分ける
・④ ワークパッケージまで分ける:担当・工数・期限を割り当てられる最小単位まで分解する
分解のときに大切なのが MECE(ミーシー)=「漏れなく、ダブりなく」という考え方です。同じ作業が2つの箱に入ったり、どこにも属さない作業が出たりしないように分けます。WBSコード(1 → 1.1 → 1.1.1 のような番号)を付けると、どの作業がどの階層に属すかが一目で分かります。
ワークパッケージとは、WBSの一番下にある、これ以上分解しない最小の作業単位のことです。上のツールの第3階層(緑のボックス)がこれにあたります。
ワークパッケージは「具体的に何をするかが分かり、担当者・工数(=かかる手間の量)・期限を割り当てられる」粒度まで分解します。逆にいうと、まだ大きすぎて見積もりがしづらい作業は、ワークパッケージになるまで分解を続けます。
ワークパッケージまで分けると、各作業に必要な日数を足し合わせてスケジュールを組んだり、コストを見積もったりできます。つまりWBSは、その後のスケジュール管理やコスト管理の土台になる、プロジェクト計画の出発点なのです。
「システムを開発する」というゴールだけでは、誰が・何を・いつまでにやるかが見えません。だからWBSで分解します。分解することで、次の3つの問題を解決できます。
① 作業の漏れ・ダブりを防ぐ:全体を見渡しながら分けるので「この作業がどこにもない」「同じ作業が2か所に書かれている」という状態を防げます。
② 見積もりができる:大きすぎる作業は「どのくらいかかるか分からない」状態ですが、小さくなれば「これは3日」と見積もれます。各ワークパッケージを積み上げると全体工数が出ます。
③ 進捗を管理できる:小さな単位に分かれているので「設計は完了、開発は50%」と具体的に進み具合を把握できます。
身近な例で言うと、「晩ごはんを作る」をそのままにしておくより、「ご飯を炊く・野菜を切る・炒める・盛り付ける」に分けた方が、所要時間も役割分担もすぐに決められるのと同じです。これがWBSで分解する根本的な理由です。
WBSは単体で使うものではなく、他のプロジェクト管理ツールへつながる入り口です。WBSで作業を洗い出したら、そのリストを使って次のツールを作ります。
ガントチャートは、WBSの各作業を横棒グラフの形で並べ、いつからいつまでやるかをカレンダー上に表した図です。「どの作業が今どこまで進んでいるか」を一目で把握できます。
アローダイアグラム(=矢印と丸で作業の順番を表した図)は、WBSの作業を「どれが終わらないと次が始められないか」という前後関係(依存関係)で結んだものです。このページで学んだ余裕時間やクリティカルパスは、このアローダイアグラムから計算します。
つまり流れは「WBSで作業を洗い出す → ガントチャートで日程を組む → アローダイアグラムで依存関係を整理する」という順番です。WBSが土台なので、WBSの精度がそのままプロジェクト計画全体の精度に直結します。