複数の通信を時間で区切って1つの回線に順番に流す多重化方式
時分割多重(TDM=Time Division Multiplexing)とは、1 本の通信回線を「時間」で細かく区切り、複数の通信(チャネル)が順番に使い回す多重化方式です。多重化=1 本の回線に複数の信号をまとめて流す技術のこと。
身近な例で考えると、1 つのレジを順番待ちで使うのに似ています。お客さん A・B・C が「数秒ずつ交代で」レジを使えば、1 台のレジでも複数人をさばけます。回線という「レジ」を、A→B→C→A→B→C… と高速に切り替えるのが TDM です。切り替えがとても速いので、利用者からは全員が同時に使えているように見えます。
上のツールで ▶ ボタンを押すと、A・B・C のスロットが左から順番に回線を占有していく様子が流れます。チャネル数のスライダーを動かすと、1 本の回線を何個のチャネルで分け合うかを変えられます。
TDM では時間を 「タイムスロット(時間スロット)」という小さな区切りに分割します。各チャネルには あらかじめ自分専用のスロットが割り当てられ、その順番が回ってきたときだけ回線を使えます。
全チャネルが 1 スロットずつ使い終わると 1 周し、これを 「フレーム」と呼びます。仕組みのポイントは以下のとおりです。
・固定割当て:各チャネルの順番(位置)は決まっており、データがあってもなくてもスロットが確保される
・同期が重要:送る側と受ける側で「いま何番目のスロットか」がズレると、誰のデータか分からなくなる
・同時に使えるのは常に 1 チャネル:周波数分割(FDM)と違い、ある瞬間に回線を使えるのは 1 つだけ
なお、各チャネルにデータがあってもなくてもスロットを確保する方式を 同期式 TDM、空いている時間を有効活用するため必要なチャネルに動的にスロットを割り当てる方式を 非同期式 TDM(統計多重)と呼びます。同期式は、使わないチャネルがあっても枠が確保されたままになるため、その分が無駄になります。
TDM は デジタル信号の多重化と相性がよく、特に デジタル電話網で広く使われてきました。電話の音声をデジタル化したデータを、たくさんの通話ぶんまとめて 1 本の回線で運ぶときに TDM が活躍します。
代表的な利用例は以下のとおりです。
・デジタル電話の多重化(PCM 多重):複数の通話を時間スロットに分けて 1 本の幹線で伝送
・SDH / SONET:通信事業者の基幹網で大量のデジタル信号を束ねる伝送方式
・GPON などの光アクセス:1 本の光ファイバーを時間で分けて複数の家庭が共有
TDM(時分割)と FDM(周波数分割)の違いは対比で整理できます。TDM は「時間で分ける」「同時に使えるのは 1 つ」「デジタル向き」、FDM は「周波数で分ける」「同時に複数使える」「アナログ向き(ラジオ・テレビ)」が対比のキーワードです。