音声をデジタル化しIPネットワーク上で通話を実現する技術。
VoIP(Voice over IP=IPの上で音声を運ぶこと)とは、人の声をデジタルデータに変換し、それをインターネットなどのIPネットワーク上で送ることで通話を実現する技術です。
従来の電話は、音声専用の電話回線を使って通話していました。VoIPでは、その音声をWebやメールと同じデータ通信網(IPネットワーク)に乗せて送ります。これにより、音声とデータを別々の回線で持つ必要がなくなります。
身近な例で考えると、手紙を宅配便に相乗りさせるようなものです。声という荷物を、すでに走っているデータ便(IPネットワーク)に載せて運ぶイメージです。専用の電話便を別に走らせるより効率的になります。上の図解で、音声がデータに変換されて運ばれる流れを確認してみてください。
VoIPの通話は、おおまかに次の4つのステップで行われます。図解の番号と対応しています。
・① デジタル化:マイクが拾ったアナログの音声を、0と1のデジタルデータに変換する
・② パケット化:データを「パケット」という小さなかたまりに分割し、あて先などの情報を付ける
・③ 転送:パケットをIPネットワークに流して相手まで送る
・④ 復元:受信側でパケットを元の順に並べ、音声に戻してスピーカーから流す
ここで重要なのが、音声データの転送にUDP(=到達確認を省いた高速な通信方式)がよく使われる点です。音声は多少データが欠けても会話は成立する一方、遅れると会話がかみ合わなくなるため、確認のやり取りで時間をかけるTCPよりも、速さを優先するUDPが向いています。
身近な例で考えると、同時通訳に似ています。多少聞き取れない単語があっても話の流れで補えますが、訳が大きく遅れると会話が成り立ちません。だからこそ「確実さ」より「速さ」を重視するわけです。
VoIPはすでに私たちの身の回りで広く使われています。代表的な用途は次のとおりです。
・IP電話:従来の固定電話を、見た目はそのままにIPネットワークで動かしたもの
・社内の内線電話:オフィスのデータ網を使って内線通話を行い、通話コストを抑える
・通話アプリ:インターネット越しに無料に近いコストで音声・ビデオ通話ができる
VoIPの大きな利点は、音声網とデータ網を1つにまとめられることです。回線が一本化されるので、設備や管理の手間・コストを減らせます。また、遠隔地との通話もインターネット経由なら距離による料金差がほとんどありません。
一方で注意点もあります。VoIPはIPネットワークに依存するため、停電やネットワーク障害が起きると通話できなくなることがあります。また、回線が混雑すると音声が途切れたり遅れたりするため、安定した通話には十分な通信品質の確保が欠かせません。
VoIPが安い最大の理由は、すでにあるインターネットの空き帯域(=使われていない通信容量)を使うからです。従来の電話との構造的な違いを見ると、コストの差がよく分かります。
従来の固定電話は回線交換方式(=通話中は2人のために専用の通信路をずっと確保し続ける方式)を使います。通話中は誰もその回線を使えないため、距離が遠くなるほど専用回線のコストがかかります。
一方VoIPはパケット交換方式(=データを小さなかたまりに分けて、他のデータと共有する通信路で運ぶ方式)です。インターネット上を流れるデータは他のWebやメールと混在しており、空いているときに音声パケットを乗せて運びます。専用回線を用意する必要がないため、距離に関係なくコストが大きく下がります。身近な例では、タクシー(専用・占有)ではなくバス(共有・コスト分担)で荷物を運ぶ違いに相当します。
VoIPはインターネットを使う便利さの反面、音声品質がネットワークの状態に左右されやすいという特徴があります。品質を下げる主な要因は3つです。
・遅延(=声が届くまでの時間差):音声パケットが経路を通過するのに時間がかかると、会話がかみ合わなくなる。一般的には150ms(0.15秒)以内が快適な通話の目安
・ジッタ(=パケットが届く間隔のバラつき):パケットが等間隔で届かないと、音声がガタガタになる。バッファ(=少し手元で貯めてから再生する仕組み)で緩和できる
・パケットロス(=パケットが途中で失われること):音声の一部が欠けて声が途切れる原因になる
これらの問題を最小限に抑えるために、VoIPシステムでは音声トラフィック(=音声のデータの流れ)を優先的に通す設定をネットワーク機器に行うことがあります。このように通信の種類ごとに優先度を付ける仕組みをQoS(Quality of Service=通信品質の保証のこと)といいます。