電源を切っても内容が消えない、読み出し専用の不揮発性メモリ
ROM(ロム、Read Only Memory = 読み出し専用メモリ)とは、あらかじめ書き込まれた内容を読み出すことを主目的とする、不揮発性のメモリのことです。RAM が自由に読み書きできるのに対し、ROM は基本的に「読むだけ」で、内容は簡単には書き換えられません。
身近な例で考えると、印刷済みの取扱説明書に似ています。中身を読むことはいつでもできますが、ページに書いてある内容を勝手に書き換えることはできません。電源を入れた瞬間に必要な「決まった情報」を読み出す用途に向いています。
ROM には次のような特徴があります。
・不揮発性:電源を切っても内容が消えない
・読み出し専用が基本:頻繁な書き換えには向かない
・起動用プログラムの保管に最適:電源投入直後に読み出される BIOS やファームウェアを入れておく
不揮発性(ふきはつせい、non-volatile)とは、電源を切っても記憶していた内容が消えずに残る性質のことです。RAM(揮発性)が電源を切ると中身を失うのに対し、ROM はそのまま保持し続けます。
身近な例で考えると、石碑に刻んだ文字のようなものです。砂浜の文字(揮発性)は波で消えますが、石に刻んだ文字(不揮発性)は時間が経っても残ります。だからこそ ROM は、消えては困る「決まった情報」を保管するのに使われます。
揮発性・不揮発性で整理すると次のとおりです。
・揮発性:RAM(SRAM・DRAM)── 作業用、速い、消える
・不揮発性:ROM、フラッシュメモリ、SSD ── 保存用、消えない
電源投入時にまず動かす起動プログラムを不揮発性の ROM に入れておくことで、コンピュータは電源を入れた瞬間から正しく動き出せます。
ROM は「書き込めるか・どうやって消すか」によって種類が分かれます。書き換えのしにくいものから順に、代表的な 4 種類を整理します。
| 種類 | 書き込み | 消去方法 |
|---|---|---|
| マスクROM | 製造時のみ(焼き込み) | 書き換え不可 |
| PROM | 使用者が一度だけ | 消去不可(1回限り) |
| EPROM | 何度でも | 紫外線を当てて消去 |
| EEPROM | 何度でも | 電気的に消去(部分単位) |
それぞれの特徴を見ていきましょう。
・マスクROM:製造時に内容を焼き込んで完成させる ROM。一切書き換えられないが、同じ内容を大量生産するなら安く済む
・PROM(Programmable ROM):購入後に使用者が一度だけ書き込める ROM。書き込んだら二度と変えられない
・EPROM(Erasable PROM):紫外線を当てると内容を消せて、また書き込める ROM
・EEPROM(Electrically Erasable PROM):電気的に消去・再書き込みができる ROM。装置に付けたまま書き換えられて便利
身近な例で考えると、マスクROM は印刷済みの本、PROM は一度だけ書けるボールペンのメモ、EPROM・EEPROM は消して書き直せるホワイトボードのようなイメージです。なお、この EEPROM をさらに発展させ、まとめて高速に書き換えられるようにしたのが、次に紹介するフラッシュメモリです。
ROM と RAM はどちらもメモリですが、「電源を切ったとき消えるかどうか」が最大の違いです。ROM は電源を切っても内容が残る(不揮発性)、RAM は電源を切ると内容が消える(揮発性)。
なぜ ROM は消えないのでしょうか。それはデータを電荷(電気)ではなく、物理的な構造(接続・非接続)や化学的な変化で記録するからです。電気が流れなくなっても、物理構造は変わらないので記憶が保たれます。
この違いを踏まえた役割分担は次のとおりです。
・ROM:消えては困る「決まった情報」(起動プログラム・設定値)を保管する
・RAM:電源を入れている間だけ使う「作業データ」を高速に読み書きする
コンピュータはまず ROM から起動プログラムを読み、それを RAM に展開してから処理を始めます。
ROM の種類で最後に紹介した EEPROM(電気的に消去・再書き込みできる ROM)をさらに改良したのがフラッシュメモリです。フラッシュメモリとは、データを大きなまとまり(ブロック)単位でまとめて消去・書き込みできるようにし、速度と容量を大幅に高めた不揮発性メモリのことです。
なぜ EEPROM からフラッシュメモリへ発展したのか。EEPROM は 1 バイト(=8 ビット)ずつ消去・書き込みするため柔軟ですが遅く、大量のデータを扱うには限界がありました。フラッシュメモリはブロックまとめて消去することで大容量・高速・安価を同時に実現しました。
フラッシュメモリは今日のコンピュータに欠かせない部品です。
・SSD(ソリッドステートドライブ):ノートPCの記憶装置として HDD に代わって普及
・USBメモリ・SDカード:持ち運べる記録メディア
・スマートフォンの内部ストレージ:写真・アプリを保管
いずれも「電源を切っても消えない(不揮発性)」というROMの系譜を受け継いでいます。